✿本編:【お酒の席はLOVERS】
SE:カランカランッ
マスター:「ん? あぁ、HIROさんでしたか。いらっしゃいませ。お待ちしておりましたよ」
HIRO:「マスターこんばんわ、また飲みに来ました。」
HIRO:BARの扉を開けマスターに挨拶をしてからいつもの席まで、歩いて行き座る。
マスター:「今日も、お疲れの様ですね。。」
HIRO:あー。。今日も仕事疲れたぁ。。。いつもここのマスターには、お酒をアレンジさせてもらってるからお世話になっている。
HIRO:「マスター、虹の雫1つ。」
マスター:「虹の雫ですね。了解致しました。今準備させて頂きます。」
HIRO:今、マスターに頼んだのは。前回俺がアレンジさせてもらったカクテルの1つ。
✿:間
マスター:「HIROさん、虹の雫です。どうぞお飲み下さい。」
SE:コトッ(グラスを置く音)
HIRO:綺麗な虹に見えるようにお酒を微調整しながら、雫の形にしたサイダーのゼリーをカクテルといい感じに合うように試行錯誤して仕上げたカクテルになる。
HIRO:見た目も味も楽しんで貰えるように、工夫しながらアレンジしたのが1番時間がかかってしまったが。。
HIRO:1口飲むと、フルーツの爽やかな味が口の中に広がって、サイダーのゼリーによるシュワシュワ感が喉越しのいい仕上がりだ。
HIRO:「我ながらに、いいカクテルだ。」
マスター:「胸を張って下さいよ。HIROさんのお陰で女性客の皆様から【虹の雫】の評判がとても良いですよ。」
HIRO:「それならアレンジしたかいがあった。マスター、またアレンジしてもいいかい?」
マスター:「もちろんです。もちろんです。此方へ来ますか?」
HIRO:「すまないな。。そちらにいってアレンジさせて頂こうかな。」
HIRO:マスターから了承を得て、【虹の雫】を飲み終わってからマスターの方に移動をし、お酒のアレンジをしていく。
✿:間
SE:カランカランッ
HIRO:お店の扉が開き、ベルがカランカランッとなったのが分かり、そちらに視線だけを向ける。
HIRO:最近よくお見かけする大人の女性の蘭さんだった。
マスター:「蘭さん。いらっしゃいませ。またタイミングのいい時にご来店されましたね。」
蘭:BARの扉を開けると、マスターに声をかけられて軽く会釈をし、ウエイターさんが居るであろうカウンターの方に視線を向けると、最近よくお会いするHIROさんがお酒のアレンジをし始めていた。
蘭:「マスター、HIROさん、こんばんわ。」
蘭:マスターとHIROさんに挨拶をしてから、いつもの席に座り水を1杯頼んで頂く。
蘭:喉を潤す為に頼んだ水を1口、また1口と口に含みゆっくりと飲んでいく。
蘭:「ふぅー(一息つく)」
マスター:「蘭さんもお疲れのご様子ですね、いつもの飲みますか?」
蘭:「ええ。そうね。HIROさんアレンジの【虹の雫】を頂けるかしら?」
マスター:「承知致しました。少しの間お待ち下さい。」
蘭:マスターから虹の雫を受け取るまで、カウンターテーブルに腕組をして腕の上に顎を乗せて、HIROさんの手元
をちらっと見る。
✿:間
マスター:「こちら、ご注文頂きました【虹の雫】になります。」
SE:コトンッ(コップを置く音)
蘭:カウンターテーブルに腕組みしていたのを辞め、座り直す。
蘭:「マスター、ありがとう。」
蘭:HIROさんがアレンジしたこの【虹の雫】は、喉越しも爽やかなのが本当にとても飲みやすくて、酔いたくない人向けでもあるのよね。。
蘭:ただ、お酒好きの私からすると。。ちょっと刺激が足らないのよね。。。
HIRO:ウイスキーにオレンジエキスを加えて、水で割ってみる。1口試しで飲むと、口あたりはいいとは言えないな。。
HIRO:オレンジ系のさっぱりしたお酒をアレンジしたいんだけどなぁ。。。やっぱり上手くいかないか。。
HIRO:「はぁ。。(ため息)」
マスター:「HIROさん、今日も完成するまでいるのでしょう?」
HIRO:「そのつもりです。毎回、ご迷惑おかけしてすみません。」
マスター:「いえいえ。私も、HIROさんのアレンジはカクテルの完成は楽しみなので迷惑だなんて思ってはおりませんよ。」
HIRO:「それなら良かったです。。」
✿:間
蘭:HIROさんは、苦い顔をしたり、急に咳き込んだり、アレじゃないこれじゃないって言いながらお酒のアレンジを試行錯誤しているHIROさんがかっこいいなと純粋に思って見ていた。
HIRO:試行錯誤している時にも感じたが、蘭さんからの視線が凄い刺さる。
HIRO:「蘭さん、何をそんなに見てるんですか?」
蘭:「HIROさんの表情を見ていたんですよ。ふふふ(微笑む)」
HIRO:俺の表情? そんなの見て楽しいのか? 俺には分からねぇーや。。
HIRO:「俺の表情をですか?」
蘭:「はい、HIROさんの表情は見ていて楽しいので。」
HIRO:「楽しんで貰えてるのなら何よりです。」
蘭:「ええ。楽しませてもらってますよ。ふふふ(微笑む)」
HIRO:ふぅ(一息つく)。作りたいカクテルのイメージはできてるのに、アレンジするってなるとやっぱり難しいなぁ。。。
蘭:「マスター、カルーアミルクくださらない?」
マスター:「カルーアミルクですね、少々お待ち下さい。」
蘭:酸味の入っててそれでも飲みやすいカクテルがあったら飲んで見たいものね。。。
HIRO:カルーアミルク? ん? ちょっと待てよ。。。
HIRO:カルーアミルクにザクロジュースをハートのゼリー型に流し入れて固める。
HIRO:カルーアミルクにレモンピールを加えて、ザクロジュースのゼリーをいい感じに合うように、微調整を繰り返しつつ、味見をしながら、仕上げていく。
✿:少しの間
HIRO:よし!これならいいだろう!!
HIRO:「マスター、試飲してくれないか?」
マスター:「もちろんです、もちろんです。」
HIRO:「コレを、1口でいい。試飲してもらえたらと。」
マスター:「では、試飲させて頂きますね。」
マスター:HIROさんから新作のアレンジ作品を試飲する時は、ワクワクやドキドキという楽しみという感情が湧き上がってくるのがとてもいい事だ。
マスター:飲む前に、香りを嗅ぐと。柑橘系の爽やかな香りとカルーアミルクの柔らかな香りが合わさって、鼻奥を刺激される。
マスター:1口、飲んでみると。レモンを入れたミルクティーを飲んでるかの様な新しい味わいに、ザクロジュースのゼリーがいい酸味を引き立てている。
マスター:「HIROさん、このカクテルはなんと言う名前なのですか?」
HIRO:「甘酸っぱい恋心を表現しようとした結果、このカクテルの名前は【愛の天使】になりますね。マスター、お味の方は大丈夫でしたか?」
マスター:「はい、爽やかな香りから、ミルクのいい味にザクロの酸味が加わり、甘酸っぱい気持ちになりますね。こちらも、お店で出してもよろしいですか?」
HIRO:「もちろんですよ!」
蘭:マスターとHIROさんの会話を聴きながら、HIROさん新作アレンジのお酒が気になって仕方ない。
蘭:「マスター、【愛の天使】私にも下さらない?」
マスター:「折角なので、HIROさんに作って頂きましょうか。」
HIRO:「え!? 俺ですか!?」
マスター:「私はまだその【愛の天使】のレシピを教えてはいただいて居ないのでね。。ここは、HIROさんに作って頂いて提供して頂けたらなと思いましてね。。」
蘭:「そうねぇ。じゃあ、HIROさん。【愛の天使】お1つよろしいでしょうか?」
HIRO:「了解致しました。では。しばしお待ち下さいませ。」
蘭:HIROさんは、少し顔を赤らめながら【愛の天使】を作っていく。
蘭:ほんと、お酒のアレンジしている時のHIROさんはキラキラ輝いて見ていて飽きないのよね。
蘭:HIROさんの事、気にはなっているけども。お互いBAR以外では会わない者同士だからか。。
蘭:どうやって声をかけたらいいのか。。いつも悩むのよね。。
蘭:私から、「連絡先教えて下さらない?」なんて聞けないし。。
蘭:勢いで言ったらいったで、お酒の力を借りるのはちょっとねぇ。。。
✿:間
HIRO:蘭さんから注文頂いた【愛の天使】。。
HIRO:マスターも、マスターでわかってて俺に振ったんだろうな。。ほんと意地が悪い。。
HIRO:お互い、BARでしか会わない同士。だけど、時々蘭さんの表情が沈んだり、上がったり。コロコロと表情や感情が変わるのが見ていて飽きない。
HIRO:いつからだろうなぁ。。蘭さんの事が気になって仕方なくなったのは。。
HIRO:俺がバーテン側に入って、お酒のアレンジしてる時に蘭さんからの視線が凄い刺さるのは、気を紛らわすのに必死なのがマスターにはバレてるんだろうなぁ。。
HIRO:このカクテルは、【愛の天使】。俺の恋心をお酒の天使が贈り届けるって意味が含まれてるなんて、口が裂けても本人には言えないな。。
✿:間
HIRO:「蘭さん、出来ましたよ。はい、こちら【愛の天使】になります。」
SE:コトンッ(グラスを置く音)
蘭:「ふふふ(微笑む) ありがとうございます♪」
蘭:【虹の雫】と言い、【愛の天使】と言い、ほんと見た目が可愛くて私は好きなのよね。。
蘭:HIROさんが私の為だけにカクテルを作ってくれたりしないかしら。。。。なーんて、そんな事叶うわけないわよね。。
HIRO:蘭さんがグラスをジーッと見つめた後に1口飲んで、びっくりした顔をしていた。
HIRO:刺激はそんなに強くはしては居ないはずだが。。口に合わなかったんだろうか。。
蘭:こんなお酒があるの!? いや、違うわね、HIROさんだからこそ作れるお酒のアレンジよね!!
蘭:こんなに美味しいだなんて、刺激もちょうど良いし飲みやすいし、ザクロジュースのゼリーが喉越しを爽やかにしてくれる!
蘭:「HIROさん!!コレ、とても美味しいです。こんなに美味しいカクテルは飲んだことありません!」
HIRO:「本当ですか!! 良かったです。お口に合わないのかとちょっと心配しました。」
蘭:「そんな、そんな。口に合わないなんて有り得ません。HIROさんのアレンジされたお酒が飲める。それだけで私は幸せなんですよ。」
HIRO:「え。。そんなに幸せなのですか?」
蘭:「はい、とっても幸せですよ。(出来れば、HIROさんに私だけのカクテルを作っていただけたらな。。。)」
HIRO:「え。。。」
HIRO:俺からの蘭さんだけに贈るカクテルを作って欲しい?
HIRO:「(小声で)マスター、この【愛の天使】の提供を蘭さんのみにして頂くことはできますか?」
マスター:「(小声で)ええ。もちろんですよ。HIROさんの恋心が叶うといいですねぇ。」
HIRO:「(小声で)あ、やっぱりバレてました? 参ったなぁ。。」
マスター:「(小声)蘭さんが来てからですよね? お酒のアレンジしを始めたのは、元々は趣味だったんでしょう?」
HIRO:「(小声)そんな事まで。。よく覚えてますね、マスター。。。」
HIRO:マスターは、クツクツと笑いを堪えてこちらを見ていた。
HIRO:マスターには叶わないなぁ。。ほんと。。
✿:間
蘭:マスターとHIROさんが何かを話してるみたいだけど、私には聞こえないって事は仕事関連の相談かしら。。
蘭:さっきの私の呟きが、HIROさんに伝わってたってことは次の日に知る事になる。
マスター:次の日の夜。
SE:カランカランッ。
蘭:「マスター、こんばんわ。愛の天使頂けるかしら?」
マスター:「ええ。もちろんですよ。あー、HIROさんから蘭さんに、こちらを預かっておりましたので渡しておきます。」
蘭:マスターから手渡されたのは、HIROさんの連絡先だった。
蘭:「え。。マスター、これ。。HIROさんの連絡先!?」
マスター:「ええ、預かっていたので、きちんとお渡し致しましたよ。」
✿:間
SE:コトンッ(グラスを置く音)
マスター:「こちら、【愛の天使】です。あー、蘭さん以外には提供しないようにとHIROさんからです。」
蘭:マスターはいたずらっ子の様に、人差し指を唇に当ててウインクをしていた。
蘭:「え。。えっと。。それはどういう意味でしょうか?」
マスター:「HIROさんが、蘭さんに贈るお酒との事です。私が知るのはそれだけですよ。後は、蘭さんの行動次第ですね。」
蘭:その話を聞いて、私がHIROさんに恋心を抱いていた事に感づかれた?
蘭:これは、ちゃんと。HIROさんに連絡を取らないと。。
マスター:蘭さんは、愛の天使を飲み終わった後、お勘定をテーブルに置いて、スマホを取り出し反対の手にはHIROさんの連絡先の書かれた紙があった。
マスター:BARでしか出会わない蘭さんとHIROさん。
マスター:蘭さんの為に、お酒のアレンジを試行錯誤しながら提供するHIROさんの一途な想いが、きっと蘭さんにも伝わったのでしょう。。
マスター:貴方も、【愛の天使】いかがですか?
✿:~終わり~
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