✿:【巫女見習いの一日】
見習い:私が巫女見習いになる前の話します。
見習い:えとね、あれはね。いつだったかな?
見習い:あ!そうそう!暖かい春の日。
✿:間
巫女:箒(ほうき)を手に持ち、境内の道の上にある、桜の花びら達を優しく道の端(はし)に寄せていく。
巫女:「もう、春なのね♪ さぁて、今日も一日神様の為に頑張りますか!」
巫女:私が、箒で境内を掃除してると木の影から3歳の妹がジーッと見てきてるのに気づいた。
巫女:「アンタ、また木の影から見てたの?」
見習い:「だって、お姉ちゃんの巫女服かっこいいんだもん!私も着たい!!」
巫女:「はぁ(ため息) あのねぇ、毎日毎日言ってるけど。アンタは、小さいから着れないよって言ってるでしょ。。」
見習い:「小さいとか大きいとか関係ないもん!!私も巫女服着たいのぉー!!」
巫女:「なんでそんなに着たいの?」
見習い:「だってかっこいいんだもん!!」
巫女:「そんな理由じゃ、巫女服は着せてあげられません。」
見習い:「えぇー。。。なぁんでぇ。。。」
巫女:頬を膨らませて下を向いて、明らか拗ね始めてる妹を無視して、箒を動かし掃除を済ませる。
見習い:「おねぇちゃん!!」
巫女:「だから、何!!」
見習い:「私も巫女服着たい!!境内の掃除もちゃんとするから、だから、着たい、着たいのぉー!!」
巫女:大きな声で、ずっと着たい、着たいって騒がれるの本当に困るから、巫女服着せてあげるか。。そしたら、静かになるかな?
巫女:「わかった。。。わかったってば。。着せてあげるから。。だから、もう騒がないで。。。はぁ(ため息)」
見習い:「本当?」
巫女:「ホント」
見習い:「嘘じゃない?」
巫女:「嘘言わない」
見習い:「やったぁー!!!!お姉ちゃん、ありがとう!」
巫女:「わかった、嬉しいのもわかったから、静かにしててよ。ほんとに。。。」
見習い:「あーい!ごめんなさぁーい!」
巫女:元気よく返事をした妹は、相当嬉しかったのかスキップしながら家に入っていった。
巫女:その後私は、掃除を終わして神様の宿る樹木に手を合わせてから妹の待つ家に向かっていく。
✿:間
巫女:家に入り、居間に行くと妹が目をキラキラさせながら私に駆け寄ってきた。
見習い:「お姉ちゃん♪ お姉ちゃん♪」
巫女:「待ってよ。今帰ってきたばかりなんだから。」
見習い:「だいぶ待ってたもん! 早く、早く!」
巫女:「だいぶって言うけどさ? 30分も経ってないよ。。」
見習い:「細かいことはいいの! 早く!着たい!」
巫女:「はいはい、わかったから。」
見習い:お姉ちゃんが渋々、タンスから子ども用の巫女服を取り出して来てくれた。
巫女:「ちょっと背中向いて、サイズ合わせるから。」
見習い:「あーい!」
見習い:お姉ちゃんに背中を向けると、巫女服をピタッと私の肩に合わせて裾とか?を見てくれてる。
巫女:「うん。大丈夫かな?」
見習い:お姉ちゃんが着せてくれて、全身鏡の前に行った。
見習い:「わぁ〜♪♪ 巫女服着てるぅ♪♪ お姉ちゃんと一緒♪♪ お姉ちゃん、ありがとう!」
巫女:妹が抱きついて来て、ニコニコ笑顔でそんな事言うもんだから、もっと早く着せてあげれば良かったかな?とそんな事考えてた。
見習い:その後に、お姉ちゃんから巫女さんのお仕事の内容を1つ1つ教えて貰って、私がまだ子どもだから。
見習い:私にできる所だけやったらいいよって言ってくれた♪
見習い:ここまでが、私が見習いになった話♪♪
✿:間
見習い:「お姉ちゃーん!おはよー!おきてー?」
巫女:「アンタ、朝からうるさいほど元気ね。。。」
見習い:「んふふ♪ だって、今日巫女見習いの初仕事だもん! ほら、お姉ちゃん、早く起きてってば!」
巫女:「わかった。。。わかったよ。。後から行くから、アンタ先に行ってな。(まだ5:00だよ。。どんだけ楽しみにしてんのよ。。後1時間寝れるのに。。。はぁ(ため息))」
見習い:「あーい! 先に行ってるね、お姉ちゃん♪♪」
見習い:お姉ちゃんに先に行っててと言われた私は、先に境内のお掃除をする事にした。
見習い:子ども用の小さい箒を掃除道具入れの中から取り出し、桜の花びらを丁寧にはいて行く。
見習い:「あ、また今日もここにいるの?」
見習い:いつも御神木様の根元に座ってこちらを見ている女の子に声をかけると、コクンっと頷いていた。
見習い:お姉ちゃんにも聞いたら、私にしか視えてないみたい。
見習い:掃除が一通り終わってから、いつもここに座ってる女の子に御守りを渡すのが私の習慣になってた。
見習い:「はい、これ。いつものだよ♪ 気をつけて帰ってね!」
見習い:そう伝えると、御神木様の根元に座ってた女の子は、手を振って空へ消えて行った。
✿:間
見習い:箒を掃除用具入れの中にしまいに行って、お姉ちゃんが来るまで御守りとか色々足らないのがないかを確認してると、階段を上がってくる音が聞こえた。
誠:「おはようございます。」
見習い:「おはようございます、誠お兄さん♪」
誠:「朝から元気だね、可愛い巫女見習いさん?」
見習い:「わたしは可愛くなんてないんですよー///」
誠:この神社には、立派な御神木があるのも見所の一つだが、なんと言ってもこの巫女見習いの小さな女の子と、そのお姉さんの巫女ペアが一番の見所だろうなぁ。。。
誠:まだ小さいのに、お姉さんの真似っ子を楽しみながらちゃんと巫女のお仕事もこなすこの女の子は見ていて癒されるし、元気をもらえる。
見習い:「あ!お姉ちゃん!!遅いよぉー!」
巫女:「あれ?もうお掃除終わったの?」
見習い:「とっくに終わったもん!! じゃなくて、誠お兄さん来てるよー?」
巫女:「へ、ま、ま、誠さま!?」
誠:俺の方を見るなり慌て始めるお姉さんも変わらず可愛いな。
巫女:「誠さま、おはようございます。今日もお参りしていきますか?」
誠:「そうですね。今日もお参りしていきます。」
見習い:「誠お兄さん、こっちこっち!」
誠:参拝者が通る場所から、見習いしてる小さな女の子は、手招きをして俺を呼んでいた。
誠:「今行くよ。」
見習い:「誠お兄さん。今日はね、こっちの神様に挨拶してあげて?」
誠:小さな女の子は、そう言って。狐の神様が住まうと言う祠を指さしていた。
誠:妹さんの足元をちらっと見ると、小狐だろうか? 小さな小さな真っ白い狐の子どもが妹さんの足首に擦り寄っているのを見て、可愛いなと思いつつ。
こんな所に狐なんていたか?と頭に疑問が浮かんだが、今は狐の神様に挨拶することだけを優先しよう。
見習い:誠お兄さんが、九尾の狐の神様が眠る祠に手を合わせに言ったのを見て、祠で眠ってた九尾の狐の神様が、くあーっとひと欠伸したと思ったら祠の扉を開けて誠お兄さんの前に鎮座して見上げている。
見習い:「誠お兄さん、神様に気に入られてる♪ 凄ぉーい!! 誠お兄さんって何者?」
誠:「え!?何者って言われてもなぁ。。。。ごくごく普通の一般人だよ。どうして?」
見習い:「だって、祠で寝てた九尾の狐の神様が起きて扉開けて、誠お兄さんの前に座って見上げてるもん!」
誠:つくづく思うが。。妹さんには、特別な力があるんだと思う。じゃなきゃ色々と説明がつかない。。
見習い:「嬉しそうに笑ってるの!こんなこと今までなかったから、誠お兄さん。。本当に普通の一般人なの? 本当は、陰陽師の家系なんじゃないの?」
誠:目をキラキラさせて聞いてくる、妹さんは本当に一般人なのかを聞いているようだ。。
いや。俺。ごくごく普通の一般人だよ。。ほんとに。。
俺には神様は視る力は備(そな)わってない。
誠:「九尾の狐の神様が、何で俺の事を見上げてるのか聞いてもらえるかな? それと。俺は、陰陽師でもなければ神様を視る力は持ってないから本当に、ごくごく普通の一般人だよ。」
見習い:「ほんとに?」
誠:「ほんとだよ。」
見習い:九尾の狐の神様に話を聞いてから、誠お兄さんにもう一度聞く事にした。
見習い:「誠お兄さんの前世に関係あるんだって。言ってるよ。ほんとに知らない?」
誠:俺の前世に、関係している? どういうことだ?
俺の前世ってそういう力持ってる家系だったのか?
見習い:「そうか、お主は。妾の事は覚えて居らぬのか。。」
誠:「え!? 妹さん!? どうしたの?いつもと口調違ってるよ。。」
見習い:「妾は今、この身体の主に体を借りておる。妾はお主の、式神じゃった。覚えておらんでも仕方あるまい。もう、2000年も、前の事じゃからのぉ。。」
誠:「に。。。2000年!? それに式神!?」
見習い:「そうじゃ、お主は霊感の強い陰陽師の家系の童(わっぱ)じゃった。」
誠:悲しそうに目を伏せた妹さんに憑依してる九尾の狐の神様が、可哀想にみえて。何で俺前世の記憶ないんだろうか?って考えてしまっていた。
誠:「。。。。。。」
見習い:「誠お兄さん? どうしたの?」
誠:妹さんが上目遣いで俺の顔色を伺っているのは、可愛いすぎて俺の心が持たない。。
誠:「ん、いや。。なでもないよ。」
見習い:誠お兄さんが頭を撫でてくれて、そのまま祠にお辞儀をして神社の方に歩いて戻って行った。
その後ろを私は、神様の子供を抱えてついて行く。
誠:「妹さん、またね。また来るよ。」
見習い:誠お兄さんは、何か考え事してるのか上の空だった。誠お兄さんの考え事がスッキリしますように!
見習い:「今世は、失わないように守ってあげないとね。。」
✿:~終わり~
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