星宙(そら)が笑ってる気がした


【時間:10分】
流飴(るい):俺、男、星宙(そら)の彼氏。
星宙の母:女

✿:本編↓↓↓

空はこんなに青いのに。。。

俺の心には、雲が多くて涙という雨が降っていた。

君が、今日。空の人になってしまったから。

俺の悲しい気持ちが、心の中で雨雲になって。

目の前が涙で見えなくなるくらい、目から涙がとめどなく流れてくる。

「泣いたら、星宙(そら)に笑われちまう。。

ぅうっ。。でも、今くらいは。。許せよ。。

神様なんて。。いねぇじゃんかよぉおおおお!!!

なんで、なんでだよ!!
なんでよりによって星宙(そら)を。。。あいつを。。連れてっちまうんだよ。。。

こんなに晴れてて綺麗な空の日に。。。。

なんで、なんで。。。。。。

星宙(そら)が神を怒らせるようなことしたのかよ。。。

医者のミスじゃないって分かってるさ。。。

分かってる。。。だけど。。。だけど。。。

星宙(そら)がいない世界なんて。。。おれは。。

俺には。。。

意味がねぇんだよ!!!!

うっぅー。。。っく。。。ぁああぁあぁあああぁああぁああぁあぁあぁああぁぁああぁあぁあ(泣)」

星宙(そら)は生きようと頑張ってたんだ。。。

病気にも負けたくないって。。

泣かずに笑顔で、『絶対生きるんだから!!』って

そう、数日前までは言ってたのに。。。

俺が不安になりすぎて、病気だった星宙(そら)を苦しめてたのかな。。。

考えすぎって言われるとそうかもしれない。

でも、どうしても頭をよぎっちまう。。

もし、あの時俺が。もっと星宙(そら)の傍にいられたら何か違ったんじゃないか?

もし、俺と星宙(そら)が出会って付き合い始めた時に、もっとアイツの身体を気遣ってやれば良かったんじゃないか?

もし、星宙(そら)が笑顔で頑張る!って言ってる時に、無理しなくていいって優しい言葉かけをしてあげられてたら、何か変わったんじゃないか?って、考えれば考えるほどキリがないのは分かってる。。

でも、それでも今は後悔が荒れ狂う波のように俺の中に押し寄せてくる。

後悔なんてしたって意味がない事。

時間を巻き戻せる訳じゃないから、考えすぎるのも良くないって事。

それくらいは、馬鹿な俺でも流石に分かってる。。

星宙(そら)と出会えて、俺の目の前はキラキラと輝いてたんだ。

星宙(そら)も、俺と出会えて良かったって思ってくれたのだろうか。。

俺は星宙(そら)と出会えて良かったって心から思ってる。

色んな感情、色んな星宙(そら)との思い出の記憶が俺の頭の中を駆け巡ってる時に、ふと、病院の屋上の扉が【カチャリ】と開く音がした。

俺は、涙で濡れた目を服の袖で拭った。

足音が静かに、俺の方へ向かって来ていた。

1歩1歩と、だんだんと近づいてきているのがわかった。。

でも、俺は、振り向く事が出来なかった。。

袖で涙を拭っても、拭っても、止まれって願っても溢れ出てくる涙のせいで。。

俯くしかなかった。

不意に、誰かに俺の肩に【ポンっ】と手を置かれた。

星宙の母:『流飴(るい)くん、ここにいたのね。』

その声を聞いて、俯くのをやめてアイツのお義母さんに向き直った。

流飴:「(涙声で)すみません。。どうしても、涙が止まらなくて。。

辛いのは、俺だけじゃなくてお義母さんもなのに。。。

すみません。。。」

そう、俺が伝えると、お義母さんはフルフルと首を左右に振った。

星宙の母:『星宙(そら)がね、流飴(るい)くんに手紙を残していたの。

流石に、勝手には見れないじゃない?

 だから、きっとココにいるって思ったから、届けに来たのよ。』

手紙。。。星宙(そら)が俺に?  手紙を残していた。。?

お義母さんから、そっと差し出された星宙(そら)からの俺宛の手紙を、受け取った。

震える手で手紙を開いて、お義母さんに一言「ここで読んでもいいですか?」って言うのが精一杯だった。

お義母さんは、星宙(そら)に似ている優しい笑顔で『もちろん
よ』とだけ返してくれた。

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           流飴(るい)くんへ、

この手紙を読んでるって事は、きっと私は死んじゃった後かな?

私は、流飴(るい)くんに出会えてとっても幸せでした。
出会った日のこといつまでも忘れないよ。
雲1つない快晴の日に、私が公園のベンチで青い空を眺めていた時に、流飴(るい)くんが話かけてくれた事。
絶対に忘れないよ。

私と同じで、青い空が好きなんだって知ってたから。

だから、私。嬉しかったの。

だって、私、ずっと流飴(るい)くんの事が好きだったから。

青い空の下、汗水垂らして一生懸命に働く貴方がとってもキラキラしていて私には誰よりも輝いて見えたから。

ねぇ、流飴(るい)くん?

私がこの世界から灯火(いのち)が消えてしまっても、

笑顔を忘れないで?

きっと、沢山泣いてるんだと思う。

でもね、夜に輝く星の1つとして、ずっと貴方を、見守ってるから。

だから、私との最後の約束。


笑顔を忘れないでね。


大好き、愛してる。


         星宙(そら)より
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手紙を読み終えた俺は、また涙で目の前が滲んでいた。

「(涙声で)こんな、状況で。。。笑えなんて。。。

星宙(そら)、今だけは。。涙流させてくれよ。。。

落ち着いたら、ちゃんと約束は守るからさ。。。」

お義母さんが、優しく俺の背中をさすってくれていた。

その優しいお義母さんも、静かに涙を流しているのに気づいた。

俺だけじゃない。悲しいのは、俺だけじゃない。。

お義母さんだって悲しいんだ。。

これ以上泣いてばかりは居られない。

もう一度、涙を袖で拭って。

深く深呼吸を何度もした。

心を落ち着かせるように。。。

星宙(そら)が青い空にいると思って。。

大丈夫、俺が忘れない限り、星宙(そら)は俺の中にいる。

俺はひとりじゃない。


何度目かの深呼吸が終わった時、ふいに青い空から視線を感じた。

この広い世界中の誰もが見ているであろう、青い空。

俺は、青い空を見上げた。。



雲1つない快晴の青い空に、うっすらと星宙(そら)の姿が見えた気がした。

とっても穏やかな、優しい笑顔で。。


星宙(そら)が笑ってる気がした。


本当は星宙(そら)の灯火(いのち)が残りわずかだと、俺は知っていた。

終わり