【時間:30分】
兄:毎日暑い日々が続いてる今日この頃。
兄:梅雨も明けて、夏真っ盛り。
兄:会社に行く人、学校に行く学生、元気にランドセルを背負って行く小学生、それに、可愛い幼稚園児や、可愛い保育園児達。
兄:この暑い中、コロナウイルスが落ち着いてきて、花火大会も何年ぶりとかで再開する地域もチラホラとニュースで見かけた。
兄:俺の住む街でも、7年振りに花火大会が行われるって回覧板で回って来てたっけか?
兄:回覧板の中身を確認してた俺の横から、ひょこっと小さい頭が回覧板の中身を覗き込んできた。
妹:「お兄ちゃん、花火大会?ってなぁに?」
兄:「あー、花火大会って言うのは。夜空に、大きい華が咲くんだよ。」
妹:「華が夜空に咲くの?」
兄:「あぁ。過去の花火大会の動画どっかにあったと思うから見るか?」
妹:「うん!!みたい!!」
兄:「じゃあ、部屋で待ってろ。持ってくからさ」
妹:「わかったぁー!」
兄:回覧板を閉じて、俺はスマホの中の花火大会の動画を確認する。
兄:スクロールして探すと、ずーーっと下の方に7年前の花火大会の動画を見つけて、妹の部屋に行く。
兄:妹の部屋を覗くと、妹が駆け寄ってきた。
妹:「あ!お兄ちゃん!あった?」
兄:「おー。あった、あった。」
妹:「みたい!見せて?」
兄:「あー、これだよ。7年前の花火大会の映像。」
BGM:ヒュー。。。ドン!ドン!どん!
妹:「わぁあーーーー♪ 綺麗ぃ~♪」
兄:「な、すごいだろ?」
妹:「7年前ってことは。。僕まだ赤ちゃんだったよね。。」
兄:「まぁ、そうだなぁ。赤ちゃんのお前も可愛かったけどなぁ♪」
妹:「今の僕は?」
兄:「今のお前も可愛いよ!」
妹:「ほんとー?」
兄:「あー。ほんとだよ、お兄ちゃんに二言はありません!」
妹:「えへへぇ~♪♪お兄ちゃん、だぁいすき♪」
兄:「あー、かわいい。俺の妹は、可愛すぎる!!」
妹:「ねぇ? お兄ちゃん?」
兄:「ん?どうした?」
妹:「この間ね、ママに頼んで浴衣買って貰ったの!」
兄:「浴衣!?」
妹:「うん!浴衣ぁー♪♪ 桜の花柄で可愛かったの♪」
兄:「浴衣買って貰えて良かったじゃん♪」
妹:「うん!嬉しかった!」
兄:「もぉー、お前も小学生だもんなぁ。やっぱアレか?」
妹:「んー?どれー?」
兄:「好きな男の子と花火大会見に行くのか?」
妹:「。。。え。。。。」
兄:「そら、そうだよなぁ。。歳の離れた兄とは流石に行かないか。。」
妹:「。。。。ない。。もん。。。」
兄:「ん?」
妹:「。。。。い。。ないもん!!」
兄:「へ?」
妹:「好きな男の子なんて居ないもん!!浴衣買って貰ったのだって、お兄ちゃんと行きたかったからだもん!!」
兄:「(この年頃だと、好きな男の子居る子のが多いのに。本当にいないって!? 何?この天使は!? 俺と行く為に、浴衣買ってもらったってマジ!?)」
妹:「お兄ちゃんと、歳離れてるから。何? お兄ちゃんの事好きだから、初めての花火大会は、お兄ちゃんと行くって決めてたのに。。。。なのに。。。。。。なのにぃ。。。。。(涙声)」
兄:「いや。ごめんな。お兄ちゃんびっくりしただけで、嫌だなんて一言も言ってないからな?」
妹:「ほんと?」
兄:「お、おぅ。」
妹:「僕と一緒に花火大会いってくれる?」
兄:「寧ろ、歳の離れたお兄ちゃんでいいんですか?」
妹:「いいの!!お兄ちゃんがいいの!!」
兄:「でも、なんでそんなに俺と行きたいの?」
妹:「え。。。だって、りんご飴とか、チョコバナナとか、買って貰いたいし、一緒に食べたいんだもん。。。ダメ?」
兄:「(コレ、あれだ。小さい彼女みたいな感じか!?いや、コイツ妹だけども!!可愛すぎんか!!)」
妹:「やっぱりダメ。。。だよね。。。。。」
兄:「ダメじゃないよ!行こ!なんでも買ってやる!」
妹:「ほんとー?」
兄:「ほんとほんと!」
妹:「やったぁあ♪♪」
兄:「(あー。。。可愛すぎる!!)」
妹:「お兄ちゃんも、浴衣着てね?」
兄:「(浴衣あったっけなぁ。。。。)わかった!」
兄:浴衣あったっけ?と頭の中の記憶を探り出したが、20歳になって浴衣なんて買わなかったからなぁ。。。
兄:よし!妹のために、これを機に、買うか!
✿:花火大会当日の夕方
妹:あー、あー、あー、緊張するぅー////
妹:全身鏡で、どこか変な所はないのか確認する。
妹:髪のアレンジよし、簪(かんざし)よし、帯よし、浴衣よし、えーと、えーと、手提げバックよし、お財布の中にお小遣い。。。も、ちゃんと入ってるからよし!
妹:サンダルもよし! うん!大丈夫。
兄:お?この浴衣いい感じだな。
兄:妹に下駄履かせると転ぶ危険性あるから、サンダルだろうし。財布も持ったし、扇子もあるから、まぁ大丈夫だろう。
兄:妹の部屋前に向かい、扉越しに声をかける。
兄:「おーい、準備できたかー?」
妹:「あ、うん! お兄ちゃん、今行くぅー♪」
兄:そういうと、パタパタと妹が部屋の扉を開けて俺の待つ玄関に向かってくる。
兄:桜柄の薄ピンクの浴衣に、黄色い帯。髪の毛をお団子にして、大人びた簪(かんざし)をさして、小学1年生とは思えない
色気をほのめかす。
兄:(可愛いというよりは。。。。。キレイだな。。。)
妹:「お兄ちゃん? どう?僕キレイ?」
兄:「あぁ。。。。とってもキレイだ。」
妹:相当びっくりしたのだろう、お兄ちゃんはポカーンとしていた。
妹:僕だってれっきとしたレディーって事がやっとわかったのかなぁ?
妹:「お兄ちゃぁ~ん?」
兄:「あ? あぁ。なんだ?」
妹:「えへへ♪ 僕がキレイでびっくりした?」
兄:「うん。びっくりした。」
妹:「えへへ♪」
兄:「さ、お手をどうぞ。可愛らしいお姫様。」
妹:「えぇ、今日1日エスコートをよろしくお願いしますね、王子様?」
兄:「なっ////(なんで兄の俺が照れるんだよ!!というか、何この破壊力!!)」
妹:「花火大会、一緒に行こ?」
兄:「行くか。」
妹:玄関を出て、光るサンダルで1歩、また1歩とお兄ちゃんと手を繋いで花火大会へ向けて前に進んでいく。
兄:ペタ。ペタ。とサンダルで歩く妹の足元は、キラキラと光り輝いていた。迷子防止にと、知り合いのおばさんが贈ってくれた光るサンダルのプレゼント。
兄:妹は、1目見ておお喜びしていたのを昨日の様に覚えてる。
兄:俺の母は男を作って出ていき、しばらくして父が再婚した。新しい母さんは、俺が13歳の時に妹を産んだ。
兄:新しい母さんは、俺の事も自分の息子の様に愛してくれた。なのに。。。妹が幼稚園年長の時、父と母の乗る車に、トラックが突っ込んで来て、2人は即死。
兄:その時、まだ高校生だった俺は、唯一の家族の妹の笑顔を守りたくて、必死にバイトに明け暮れていた。
兄:妹は幼くして、ママとパパを一度に亡くし。毎日夜泣いていた。
兄:最近は、少しずつ笑顔が増えてきて。夜泣きも減ってきた。妹の笑顔の為に、父親代わり兼お兄ちゃんとしてこれからも頑張っていこうと。浴衣に身を包んで大人に変身した妹を守っていこうと更に強く思った。
妹:「ねぇ、お兄ちゃん?」
兄:「ん?」
妹:「ママとパパが死んじゃってから、1番大変だったのって。きっと、お兄ちゃんだよね。。。」
兄:「ん?あー。でも、お兄ちゃんは大変なんかじゃなかったよ」
妹:「んーん。大変だったと思うし、今だって、僕の父親代わりもしながら、お兄ちゃんとしても接してくれてるの知ってるよ」
兄:「。。。。そうか。。。気づいてたのか」
妹:「だからね、お兄ちゃん。」
兄:「ん?どうした?」
妹:「ありがとう♪」
兄:「いや。。。」
妹:「お兄ちゃんのお陰で、ママとパパの事は今でも悲しいし、寂しいけど少しづつだけど前を向けるようになってきたよ。だから、お兄ちゃん、ありがとう♪」
兄:「あ。。あぁ。。(感動泣)」
妹:「あのね、僕、花火の事調べたの。」
兄:「うん。」
妹:「そしたらね、花火はお盆に帰ってくるご先祖さま達を迎える為に夜空に大きな華を咲かせるんだって。」
兄:「うん。」
妹:「供養の為でもあるんだよね? なら、パパとママにも、浴衣姿見てもらえるかなって。」
兄:「あぁ。そうかもな。」
妹:「うん!だから、花火大会楽しみたいの!」
兄:「わかった。じゃあ、父さん、母さんに笑顔沢山見せてやろうな!」
妹:「うん!」
✿:花火大会の会場の縁日。
妹:「わぁ~♪♪ すごい!すごい!」
兄:「こらこら。そんなに急がなくても屋台は無くならないよ」
妹:「お兄ちゃん、最初は、チョコバナナね!」
兄:「はいはい。」
兄:チョコバナナの屋台に並び、店主のおじさんに、1本下さいと伝え料金を渡すと、妹が可愛いからと1本多めにと、渡された。
妹:「おじさん、ありがとう♪」
兄:ニコニコ笑顔で、チョコバナナを1口頬張る妹がとっても可愛くてにやけてしまうのをグッと堪えて、次の屋台に並びに行く。
妹:「はむっ。はむっ。お兄ちゃん、チョコバナナ美味しい♪」
兄:「美味しいな!」
妹:「次はね、りんご飴!」
兄:「お?いいなぁ。りんご飴も買ってあげるよ」
妹:「いいの? やったぁー!」
兄:妹と手を繋いで、りんご飴の屋台へ目指す。
妹:「お兄ちゃん、見て!みて!りんご飴の屋台さんに、いちご飴とぶどう飴もあるよぉ~♪♪ いいな、いいなぁ~♪」
兄:目をキラキラさせて、欲しいなぁって言う感情がダダ漏れになってる横の天使の背中に手をそっと置いて耳元で。小さく「全部買ってやる」と伝える。
妹:「ほんと!? やったぁ~♪♪ お兄ちゃんだぁいすき♪」
兄:俺のお腹目掛けて抱きついて来るこの可愛い天使の背中を撫でてから、屋台のお姉さんにいちご飴、ぶどう飴、りんご飴を1個ずつ下さいと、伝えるとオマケで、キャラクター飴もつけてくれた。
兄:「すいません、ありがとうございます」
妹:「わぁ~♪♪ ピカチュウだぁ~可愛い~♪♪」
兄:「良かったな!」
妹:「うん!」
兄:夜ご飯に焼きそばを1つ買って、花火を見る場所取りをしに土手に向かって行った。
妹:「人、沢山いるね」
兄:「手、絶対離すなよ?」
妹:「うん!離さないよ!」
兄:土手を歩いていて、人がまばらになっている所を発見し、持ってきていたレジャーシートを広げて妹と一緒に座る。
兄:「ここら辺なら、良く見えそうだな。」
妹:「花火って音大きいんだよね?」
兄:「そうなるな。怖いか?」
妹:「んーん!怖くないよ!だって、お兄ちゃんと一緒だから♪」
兄:「そっかそっか。」
妹:「うん! 焼きそばちょうだい?」
兄:「いいぞ。一緒に食べるか。」
妹:「うん!」
妹:お兄ちゃんに割り箸を割って貰って、焼きそばをフーフーしながら1口、また1口と頬張る。
妹:ママとパパと一緒に食べた焼きそばの味がして少し泣きそうになったけどグッと涙が出るのを堪えて、お兄ちゃんに、「美味しいね♪」と伝えた。
妹:目に涙溜まってたかな? 涙は出ないように堪えたけど。。。
兄:目に涙を溜めて、ニコッと笑って焼きそばを「美味しいね♪」という妹は、きっと、母さんと父さんと一緒に食べた焼きそばの味を思い出したのだろう。
兄:妹の背中を優しくさすってやると、アナウンスが流れ、そろそろ花火大会が始まるようだ。
妹:放送が流れ出して、「なんの放送?」ってお兄ちゃんに聞くと、花火大会が始まる合図だって教えてくれた。
妹:初めての花火大会。
妹:天国にいる、ママとパパもきっと今お兄ちゃんと僕の横に居てくれてるだろうと、そう思って。
妹:花火が打ち上がるのを夜空を見ながら待つ事にした。
✿:間
兄:数十分後、花火大会が始まり。最近流行りの曲に合わせて花火が打ち上がっていく。
兄:7年前よりも、綺麗に夜空に華が開いていく。横に座ってる妹に視線を向けると、目からつーっと涙を流しながら花火を見あげていた。
妹:曲に合わせて花火が打ち上がっていく。キレイだなぁって思って、でも。心のどこかでやっぱり。ママとパパとも一緒に見たかったって思いが涙となってつーっと頬に垂れて来たのがわかった。
兄:「花火。。綺麗だな。」
妹:「うん。。花火。キレイだね。」
兄:「お? ハートっぽいのがあったぞ?」
妹:「え?どれどれー?」
兄:「ほら、アレ!」
妹:「わぁあー!ほんとだぁー!」
兄:嬉しそうに、はしゃぐ妹が本当に楽しそうで良かったとおもった。
妹:「天国にいるママとパパ。僕頑張るね!お兄ちゃんと一緒に笑顔沢山咲かせて毎日楽しむ!だから、だから。。見守ってて。。」
兄:花火の音で妹のつぶやきは聞き取れなかったが、何となく母さんと父さんへの思いを口にしているんだとそう感じた。
兄:自然と、妹の頭を優しく撫でた。
妹:「お兄ちゃん?」
兄:「なんでもない。髪の毛に、葉っぱが、乗ってただけだった。」
妹:「わぁあー~♪ おっきいー!!!!」
兄:「でっかい華が夜空に咲いてるな。」
妹:「うん!とっても大きい華が咲いたぁー!!」
兄:「また。来年も見に来ような?」
妹:「うん!来年だけじゃなくて、毎年お兄ちゃんと見に来る!」
兄:「そうだな。毎年来ような」
妹:「うん!」
兄:花火大会もあっという間に終わり、レジャーシートを片付け妹の手には、りんご飴、いちご飴。ぶどう飴が入ったビニール袋が下がっていた。
妹:ピカチュウの飴を舐めながら、お兄ちゃんと手を繋いでお家まで歩いて帰る。
✿:数日後。。。
兄:夏の風物詩でもある花火は、お盆に帰ってくる先祖達を供養する為に打ち上がる大きな華である。。。。と。。。
兄:妹の絵日記に、そう書いてあった。
兄:「夏の風物詩って。。。どこでそんな言葉覚えてきたんだ?」
兄:妹の成長が日に日に目に見えてきて毎日がとても楽しい。
妹:「お兄ちゃん、来年も再来年も。花火大会、一緒に行こ?」
❀:終わり
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